不法滞在の帰り方
不法滞在者がどうやって帰るのか。
多くの人は全員もれなく強制送還だと思っているのではないだろうか。
実はそうでない人もいる。それが出頭だ。
めちゃくちゃ簡単に言えば、捕まった人は強制送還、自分で帰りますと入国管理局に自首した人が自主帰国。今回はあまり知られていない自主帰国の流れについて。ただし、あくまで私の知っている当時の中国人不法滞在者の場合に限る。
例えば自分が不法滞在者だとする。金も稼いだし、そろそろ中国に帰ろうかなと思う。しかし日本のビザも、パスポートの期限も切れている。このままではチケットも買えない。
そこで最寄りの入国管理局に出頭だ。
すると入管が出頭した証明書をくれる。おそらく入管で余罪や他の犯罪との関わりの有無などを調べられ、問題なければ発行という流れなのかな、と思う。
そして出頭証明書と、中国籍であることを証明する書類などを中国大使館に持って行くと「回国証明書」が発行される。回国とは中国語で帰国の意味。
この証明書はパスポートのような冊子の形ではなく、A4の一枚の紙だ。
内容はパスポートの個人情報ページとほぼ同じ。名前や生年月日、顔写真など。
このA4の紙一枚で飛行機に乗って帰国して行く。
こういった不法滞在者本人による申請は、大体毎日5〜6人。
出頭証や帰国証明をゲットしていれば、万一入管職員や警察に職質されても大丈夫。もうビクつく必要はない。
あたしゃもう帰りますんで!とドヤ顔できちゃう。
ちなみに捕まって入管に収監された場合は、入管からまとめて書類が送られてくる。こちらは一日平均10人分ほどだった。
なので一日で15人前後の不法滞在の回国証明書を作成していた。
毎日それだけ作っているとマヒしてきて、ただの事務作業になってくる。
が、一番最初に作った時に「え、こんな紙一枚で飛行機乗れるんだ、すげぇ。てかどこにスタンプ押されんだろ」と驚いたのは今でも覚えている。